時を超えた男

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 一人きりになった私は途方に暮れ溜め息を吐く。  こんな訳のわからない時代で、たった一人、どうやって、生きていけばいいんだ……。  こんな事になるなら、まだ須磨に流されていた方がましだった…。  同じ時代なら、紫の上といつかは必ずや再会出来ると希望を持てたのに…。  平成(ここ)ではもう、そんな希望すら持つ事を許されない。 「紫の上…」  愛しい人。どうか、無事で…。  ふと夜空を見上げる。  この世界では、星一つすら見当たらない──。  この、おかしな、世界では──。
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