時を超えた男~雅臣side~

2/16
前へ
/57ページ
次へ
 もう、驚いたのなんの。こんなに驚いたのは俺が生まれてから初めてかもしれない。  俺の家のすぐ向かいにある公園のベンチに、その男は横たわっていた。  しかも、真夜中の2時。いくら雪の降らない都心とはいえ、1月の東京の夜は身が凍るんじゃないかってほど、寒い。  俺の部屋の窓はちょうど公園を見渡せる向きにあって、俺はしょっちゅう、公園で酔いつぶれて寝てるオッサンや若者を見ていた。夏は放っておいても全然構わないが、さすがに冬は放っておけない。  知らない内にそのまま、公園でぽっくり逝かれたりしちまったら、放っておいた俺が罪悪感に苛(さいな)まれかねないからな。  だから、俺は冬の夜中はきまって、公園で眠りこけてる奴等を起こしに行ってるんだ。  我ながら親切な事だと思うよ。  神様が見てるんなら、何か褒美をくれたって良さそうなのにな…なんて思う。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加