時を超えた男~雅臣side~

5/16
前へ
/57ページ
次へ
 驚き、飛び退いた俺を男は鋭い眼差しで睨み据える。  光る刃(やいば)のような眼差しに俺は気圧されつつも、男の顔から目が離せずにいた。  …こんな、男、見たことがない。  これまで俺は男女問わず、イケメンや美女を何人も間近で見てきたが、ここまで『美しい』という言葉がしっくりくる人間は初めてだった。  見惚れるを通り越して、魂をまるごと奪われるような、息が止まるような、そんな感覚。  念の為に言っておくが、俺にソッチの気は全くない。健全なる異性愛者だ。  なのに、この男は、そんな、性別すらも超越してしまうかのように、全てが圧倒的な”美“で満ちていた。  コイツはただ者じゃない───。  気付けば、俺は自然にこう口にしていた。 「なぁ、お前、うちのバンドのボーカルやらないか?」
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加