時を超えた男

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「なぁ、しっかりしろよ?大丈夫か?」  心地好い眠りを妨げるように、誰かが私の体を揺さぶる。  邪魔しないでくれよ…。私はさっきようやく久方ぶりに眠りに就くことが出来たのだから。    遠い海鳴りだけが響く世界で、ただ一人きり長い時間をもて余し、絶望と諦めの中で、もしかしたら夢の中でくらいなら、最愛の女(ひと)に逢えるかもしれないと期待していたのに…。 「なぁ、こんな所で寝てたら死んじまうぜ?おい。起きろってば」  勢いよく体を揺すられ、堪らなくなって私はがばっと身を起こした。 「なんなのだ!無礼な…」
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