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その見覚えのある顔に、俺は呆然とする。まさか、こんな事があるなんて…。
「すまないね。気付かなくて。君が櫻井君かい?凄いイケメンだねぇ!びっくりしちゃったよ」
おっとりした物腰、目尻の下がった好好爺(こうこうや)といった風貌。全てが左大臣に酷似している。
こうなると……。俺は確信に近い思いで、こそっと雅臣に訊いてみる。
「雅臣って妹がいたりする?」
すると、雅臣は、
「いや。妹はいないけど、弟ならいるぜ」
と告げた。弟…。さすがに、偶然は続かないか、と少しがっかりした時、雅臣が
「アイツ多分、まだ起きてっと思うから呼んでくるわ」
といい、いきなり階段の上に向かって叫んだ。
「おーい!葵ー!!アーオーイー!!」
えっ!?俺は一瞬、聞き間違えたのだと思った。まさか、葵のはず…。
「なんだよっ!!うっせぇなぁ!何時だと思ってんだよ!?」
階段の上からバンッと乱暴に扉を開ける音がし、まだ瑞々しい少年のような声が返ってきた。
「俺のダチで、『べリアル』のボーカルになる奴連れてきたんだ!降りてこいよ。どうせ、ネトゲしてるだけだろーが」
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