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ついさっき、鬼のような形相でリビングを出て行った妻が、今度はやけに明るい笑顔で戻ってきた。
リビングに入るなり、私に
「ちょっと、お父さん!ぼんやりしていないで早く櫻井君に挨拶して」
と、急かすように告げた。ふーん。どうやら珍しく妻は、雅臣が連れてきた友達を気に入ったらしい。
雅臣が、普段連れてくる友達を、妻は「不良だ」「ヤンキーだ」などと毛嫌いしているが、私は彼等が根っからのワルではない事をちゃんと知っている。
むしろ、誰よりも純粋な心を持った青年達なのだ、と、私は自分の若かりし頃を思い出しながら考える。
やれやれ、とソファから立ち上がり、私は妻の後ろを追うように、だがのんびりと玄関に向かった。
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