第1章

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 遊馬人形以外の魂は、どうにか魂を取り出す事ができた。取り出した魂を、元の肉体を探して戻す作業が幾日も続いた。このままではキリがないうえに、俺の体力も持たない。直哉も毎日、千里眼を使い肉体を探し続け疲労していた。  しかも、間に合わなかった魂も出てきてしまった。肉体の方が、体力を消耗してしまい、もしくは、誰にも見つけられずに、倒れたままとなり餓死してしまっていた。  真里谷の反対勢力が、この被害者達だった。許していい範囲ではない。 「真里谷と話をつける」  真里谷が犯人とは決められないが、関係している事は確かだ。俺は真里谷のもとに、一人で行こうと決めていたが。その考えを見透かされたのか、御形も真里谷に会うと言い出した。直哉は試合が近く、空いていなかったのだ。  放課後、真里谷の学校の近くで待っていると、女子高生が御形を見ていた。  御形は目立つ。御形を目印に立たせておくと、真里谷の姿を見つけた。 「真里谷」  真里谷、名前を阿久津にはまだ戻していないと聞いているので、真里谷と呼んでいいのだろうと、ふと余計な事を思い出す。 「目立つな、二人で居ると、相当目立つよ。教室まで、絵になる二人が居るとか、天使みたいに綺麗な子がいるとか、きたよ」  真里谷が不機嫌だった。確かに、御形は視線を集めていた。ここで、立ち話しというわけにもいかない。 「真里谷の家が一番近いかな」  電車で一駅あったが、真里谷の家に着くと、まだ家具はそのままだった。 「で、何の用?」  俺は、黙って遊馬人形を渡した。 「何だ、これ?どこに在った?どうして…」  真里谷が驚く様子は演技ではない。真里谷はソファーに座って、人形をじっと見つめていた。 「俺の仕業だよ。邪魔な人間を封じた」  今度は嘘だ。真里谷、案外、嘘はつけないタイプらしい。 「これ、誰の仕業だ?」  御形もソファーに座ると、勝手に戸棚から写真を出した。写真には幾人もの人が写っていたが、その何人かが、確かに人形と同じ気配がしている。  真里谷は立ち上がり、冷蔵庫から水を出すと、一気に飲み干した。 「遊馬だ…」  人形に封じられたのは、真里谷の両親とのことだった。真里谷の親は、養子だったが息子に執着し、度々、阿久津家にも訪ねてきていた。 「遊馬が、こんなこと出来るのか?」
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