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飛び起きようとしたが、体が重い。横のベッドで直哉も唸っていた。
「二人とも、高熱です!」
御形の母親に、ピシリと言い放たれる。
「学校が」
「この状態で行けるはずがないでしょう!」
高熱は分かっている、だけど、これは病気ではない。
「一穂!」
一穂も学校の筈だったが、ちょこんと顔を出していた。
「一穂、送っていってあげるから、学校に行きますよ」
布団から手を出して、一穂を呼ぶ。一穂はランドセルを背負った状態で中に入ってきた。
「一穂、学校に行くまででいいから、手を握っていて、お願い」
「俺のも、お願い」
一穂は、俺と直哉の手を握っていてくれた。そして、母親に引きずられて一穂が去ってゆく。
「元気、出たな」
「ああ」
一穂の能力も、俺達には謎だが。強いて言うならば、共鳴力。相手に共鳴して、その心や体に共振する。一穂自身の体調が崩れる場合も多いが、今回は助かった。
「温かいな人間の心は」
一穂が、俺達を心配する気持ちに触れ、闇の寒さで震えていた俺達の心が温まった。
「しかし、相手は、人間だよな。俺達、修業が足りないのか?」
メンタルな面で、俺達は弱いのかもしれない。
「人形、取り戻したら、後は逃げよう」
悪霊よりも、厄介な存在だ。逃げるしかないだろう。
「そうだな」
直哉も行く場所がなくなり、御形の家に住んでいる。御形の家には、借りがある状態と感じているので、役には立ちたいのだ。それで、互いに無理してしまう。
無理は禁物、心配を掛けてはいけない。分かっているけど、いつも突っ走ってしまう。
ベッドで眠っていると、携帯電話に御形から遊馬も風邪で休んでいるとの連絡があった。
俺も、直哉も一穂のおかげで元気になっていた。
「行くか?」
直哉もそっと、ベッドを抜け出した。
そっと庭を抜け、バイクを押して移動させる。直哉もバイクの免許を持っていて、最近バイクも購入していた。
二人で、バイクを押したまま寺の外に出ると、エンジンを掛けた。ナビをセットし、遊馬の家へと向かっていた。
遊馬の家へと到着すると、平日だというのに、美容室の駐車場は、車がびっしり止まっていた。店の中には、予約制なのだろうが、待っている人間の姿も見えた。
裏手に回り、玄関のチャイムを鳴らすと、パジャマを着た遊馬が出てきた。
「黒井と雑賀?」
遊馬が出てきたのは、店が忙しく、祖母も店を手伝っているのだそうだ。
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