第1章

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『馬鹿者。どこに居る。まあいいか場所は。恭輔が実況してくれていた。まず、階段まで下がれ。そして、壁をしっかりと掴んでいろ。成仏させてやる』  玲二、霊に対しては無敵に強い。但し、何か薬物を含んでいる場合に限る。薬物と言っても麻薬のようなものではなく、風邪薬や胃薬などと、病気に効くもの限定ではあった。このせいで、玲二は霊能力者ではなく、今は大工をしている。  玲二、携帯電話経由でも、霊を成仏させることができる。  俺が、人形を掴むと、光のような閃光が走った。眩しくて前を向いていられなかったが、ふと下を見ると、一歩先に海が見えていた。  徐々に閃光が薄れると、正面は海しかなかった。崖の中腹で、俺と直哉は元階段だったのだろう、洞窟のような場所に立っていた。 「部屋は、どこ?」  直哉は、あと少しで海に落ちるところだった。 『見ていたのは霊による幻だ。お前たちは最初からその位置にいただけだ』  玲二が、電話を切った。洞窟の煤の様子から、火災があったのかもしれない。  この位置で火災が起きたら、消火の方法が無かっただろう。見えていたと思っていたが、男も霊だったのだろう。  しかし、手に握っていた人形は、実体だった。 「この人形、どこから現れたのだ?」  無かった筈の部屋から現れた人形。遊馬の生霊は取れている筈だが、どこまでも怖い人形だった。  これならば、自分の意思で移動ができるのかもしれない。  ポケットの携帯電話が又鳴った。 「玲二さん?」 『外に出たら、結界を張れ。そうしないと殺される。今、御形に連絡をした、迎えを出したとのことだ。結界内で待て』  一方的に用件を言うと、玲二は電話を切っていた。霊に対しては、玲二の見解に誤りはないだろう。  足場の悪い洞窟を抜けると、雑草だらけの丘に出ていた。物置も幻だったのだろうか、周囲には物置など無かった。けれど、リゾートホテルは今も存在していた。  妻の死亡と、この景観を損ねるホテル。絶望したのだろう。 「もう少し、道に近づくか」  道が見える場所で、自分の毛を媒体に結界を張った。もう少し移動したかったが、この人形がどんどん重くなってきたのだ。 「本当に人形か?これ。妖怪じゃないのか?」  人形に問いかけてみても、人形は笑うばかりだった。
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