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CLOTH DOLL(クロスドール)
第一章 はじまりの人形(ひとがた)
人形には時折、魂が宿ると言う。そう言って持ち込まれた人形があった。否、持ち込まれそうになり、逃げ出した人形があった。
俺は、黒井 典史(くろい てんし)高校生。霊能力者の一族にありながら、霊が見えない、声も聞こえない偽霊能力者だ。ゆえに、自称高校生詐欺師だと思っている。
でも、最近、人には言えない秘密を抱えた。俺は、母が自分の役目?のご褒美に、貰った天使らしい。
俺が、住んでいるのは御形というお寺だった。その御形に、人形が持ち込まれる予定だったのだが、その日来たのは、その人形の姉妹だけだった。
美人姉妹とその母親は、現在美容室を経営していた。妹は実家とは離れて街中で店を持ち、姉と母は昔からやっている店を切り盛りしている。
どちらも評判の人気店で、忙しい日々を送っている。
清楚な服装で現れた三人は、御形の寺ではなく、御形の住宅の方の居間で、二体の人形を鞄から出した。
何故、住宅のほうだったのかというと、そこには俺と、俺の従兄の雑賀 直哉(さいか なおや)が居るためだった。
俺達は、居間に呼ばれて、一緒に人形を見ていた。
手作りの人形で、和服を着ていた。和服の生地は古いが良いもので、帯もしっかりした本物を使用していた。
よく亡くなった方の遺品で、人形を作るという場合はあるが、これは異なる。何故ならば、この二体の人形は、訪ねてきている姉妹に面立ちが良く似ていた。
多分、この二人の子供の頃に似せられて造られたものなのだろう。生きている人に似せる場合は、遺品など使わないのが普通だ。
「人形はもう一体あったのです」
訪ねて来た三人は、母を阿久津 芳江(あくつ よしえ) 姉、絢香(あやか)妹、沙耶(さや)と言った。本当は、年の離れた末っ子で長男の、愛斗(あいと)という者がいて、その人形を含め三体だったのだそうだ。
「愛斗は、もうすぐ幼稚園生だという、五歳の春に行方不明になりました」
人形は、愛斗が居なくなり悲しんだ、芳江の妹が、それぞれが七五三の三歳に来た着物を元に製作したものだった。
「愛斗の人形だけが、鍵を掛けた戸棚に入れておいても、金庫にしまってあっても、居なくなり、又、帰ってくるというのを繰り返すのです」
まず、愛斗が行方不明になった状況の説明を聞いた。
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