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泣き崩れる両親を見ても、真里谷の心は揺らぐことも無かった。遊馬に対して冷たかった、両親など要らない。
「名乗ったぞ」
「ああ、良かった。これで、愛斗を探す役目から解放される」
遊馬は、部屋の荷物をまとめていた。
「どこに行く気だ?」
阿久津の両親が慌てていた。
「愛斗君は見つかりました。今度は俺が消えます。貴方たちの望み通りに」
いつも、消えたのが遊馬だったらと言われてきたのだ。
……。
「事情は今の説明で分かったけど」
「で、何故ここに?」
俺と直哉は顔を見合わせた。遊馬、御形の家に引っ越ししてきたのだ。しかも、俺と直哉の部屋に来た。
御形の両親も困っていたが、見捨てられない家系のようだった。
「真里谷が体と言えば、真里谷の家に行くつもりだった。心だから、体は自由になった。ここに暫し置いてくれる」
御形の母親が、阿久津の親を説得して、どうにか丸く収まりはした。
御形には真里谷も入っては来られないが、俺の羽はまだ復帰には時間がかかる。結界が万全の状態ではない。
同じ高校の四人が、同じ家で暮らしている。毎日が、合宿のような雰囲気になってしまった。俺は、遊馬と同居することにより、あれもこれもバレてしまった。
俺の親が、本当に霊能力者であること。俺が霊は全く関知できずに、偽霊能力者であること。直哉は従兄で、おなじく霊が全く関知できないこと。
バイトで生計をたてていること。一番困ったことが、遊馬、俺の翼が見えていた。
「手羽」
あるとき遊馬の口が滑ったのか、俺の翼を手羽と呼んでいた。
「手羽先のようだから」
慌てて言い訳をしていたが、言い訳よりも見えていたことが問題だった。
「見えていたの?」
「最初から、学校でも」
学校で見えている人が居たとは、全く考えたこともなかった。
「他にも、見えた人は居るかな?」
「さあ」
遊馬は、手羽になった経緯にも気が付いているようだった。
「やさしいよな、黒井。他人の為でも一生懸命でさ。学校でのクールな姿が、今は微笑ましいよ。無理しているなって分かって」
遊馬、もっと大人しい性格なのかと思っていたが、結構喋る。
御形は、遊馬の同居のせいで、もの凄く不機嫌になった。
「しかし、黒井って綺麗だな。どこもかしこも」
御形が過剰に反応するのを、遊馬が笑って見ている。
「どこもかしこもって、どこまで見たの…」
「一緒に風呂に入っているだろう」
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