第1章

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 で、結局、興味に負けてしまった。直哉の透視は、従兄の血の繋がりのせいか、体を振れることにより多少は共有できる。覗いてしまった。  やはり、心だけというのは無理だったらしい。真里谷は、遊馬を自分の部屋に飛ばしていた。  真里谷の部屋となると、透視では無理で千里眼となる。見るか。止めるか、迷った挙句、直哉と少しだけ見る、で、落ち着いた。  名目としては、危険な目に遭っていないかの確認だ。殺されそうになっていないのならば、それ以上は確認しない。二人でじっくり話し合えばいい。  直哉と、千里眼の映像を共有した。やはり、見てはいけなかった。 「やっぱり…心だけは無理か…」  直哉の顔も見られない。すごく恥ずかしい。遊馬、真里谷を受け入れていた。 「顔合わせられないよ。見なかったことにしておこうな。見なかった、知らない」 「俺達は何も知らない」  そういうことにしておこう、直哉とうなずきあう。  真里谷、遊馬を手に入れたのならば、満足できたのだろうか。  その日遊馬は帰って来なかった。  俺だって、御形と出会う前は、彼女も居たしそれなりのことはやってきた。でも、本当の恋は違っていたのだ。  相手に触れる事も怖い時もある。  その日、遊馬は、真里谷と一緒に行くと決めていた。  遊馬が行ってしまってから、数日後、俺宛に荷物がやってきた。荷物は、玄関にやっと入ったと言う程の、巨大な物だった。送り主を見ても全く知らない人だ。  送り返そうとしたが、宛先不明で戻ってきていた。  中身を開けてみると、畳ならば一畳は超える、巨大な絵画だった。どこかで見たような、絵だ。確か、人形を取りに行った先で、幻の中に在った絵画に酷似していた。 「あら、私ファンだったのよね。作者が亡くなってしまって、雑誌とかでの紹介は無くなってしまったけど」  御形の母が、絵を見て感動している。霊とは会ったが、生きている時には会っていない。 「火事で亡くなられたのですか?」  部屋には火災の跡が残っていた。 「いいえ。アトリエは、死後、火災に遭ったと聞きましたけどね、作者は風邪をこじらせて肺炎で亡くなったのよ」  絵には手紙が添えられていた。
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