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『倉庫を整理していたら、突然、兄の作品が見つかり、そこには黒井典史に売却済品と書かれた、直筆のメモが残っていました。代金を頂戴済ともあり、領収書も貼られていました。慌ててお送りいたします。兄が亡くなってそのままになっていたようです』
要約すると、このような内容だった。領収書とは何なのだろうか、すごく気になった。
「絵、どうしましょうか?」
「飾ってもいい?」
御形の母、絵の傍でもじもじしていた。余程のファンだったのだろう。
霊との約束も有効なのだとは知らなかった。絵は御形の家の、廊下に飾られることになった。
絵が掛けられていた居間で夢見ていた、家族がここには在る。絵だけでも、幸せにはなって欲しかった。
又、次の日、今度は俺宛に、小包が送られてきた。送り主は不明。開けてみると、これは、阿久津の家の人形と同じ作者の人形だった。丁寧に、精密に作られた布製の人形で、やはり和服を着ていた。
「遊馬?」
やさしい笑顔は遊馬の面影に似ていた。しかも、この人形は生きている。
「魂、入っている、この人形」
魂が入っているだけではない、この魂は遊馬だ。惹かれあう心で分かる。
「真里谷…」
何て事をしているのだ、真里谷。
「御形、居るか?」
御形の部屋を訪ね、遊馬の人形を見せる。御形、霊は見える。
「遊馬だね。でも、生きたまま封印されている」
遊馬、生きているのか、少しほっとした。
「直哉、遊馬の居所を探して」
直哉が千里眼で、遊馬を探すと、阿久津の家で夕食を取っていた。
「遊馬の、魂だけが入れ替わっているみたいだ」
「真里谷はどこに居る」
こんなことをして許される筈がない。
「ここの玄関だ」
玄関から声が聞こえてきた。三人で玄関まで走ってゆくと、真里谷が学校の制服のままで立っていた。
「真里谷!」
「話を聞いて欲しい」
ケンカとなりそうで、居間に通すのも憚られ、俺の部屋に真里谷を通した。
「どういうことだよ、遊馬をどうした」
真里谷が、胡坐をかいて座った。堂々としているが、時折、悲しげに人形を見つめていた。
「心を貰った」
魂を貰ったということなのだろうか?でも、その魂でさえ、手放しているのではないか。
「長くなるけど、説明する」
真里谷は遊馬を愛したことにより、バランスを崩した。真里谷を殺人鬼扱いする集団に狙われ、逃げることになった。
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