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遊馬も一緒に逃げてくれたのだけど、とある橋で追い詰められた。橋の両側から挟み撃ちになり、川に飛び込んでしまった。直ぐに救けが来たのだけど、遊馬は目を覚まさなかった。目を覚まさない遊馬を抱えての逃走は、困難を極め、遊馬が殺されそうになった。そこで、心と肉体を分離し、両方を安全な場所へと送った。
「…又、橋か…」
橋には色々思う事があるが、又、飛び込んだのか。よく考えて飛び込んで欲しい。
「俺の所が、安全な場所?」
俺の所が安全な場所なのか?俺は、霊が見えないのだから、人形が生きていることに、気付かない可能性もある。
「直ぐに、遊馬だと分かっただろ?」
真里谷にも苦肉の策だったのだろう。
「作る筈だった過去の人形を呼び寄せた。この人形ならば、遊馬が安らかに眠っていられるだろう」
どこまで、人間離れしているのだろうか、真里谷。
「愛している気持ちが消せないのならば、俺という、この存在はダメかもしれないけれど、少しの間でも遊馬と過ごせて幸せだった」
決して善にはならない存在だと、玲二から何度も言われていた。それは分かっている。
「恭輔、居るか?」
「はい」
俺の守護霊の恭輔を呼んだ。
「人形の中の魂を起こせるか?」
恭輔の気配が消える。俺は、自分の守護霊であっても姿を見る事はできない。
「今すぐは無理だな。魂に傷がある」
今すぐでなければ、目覚めさせられるということか。
「恭輔、存在悪というのは、抑えられるか?」
「そこの人のことを言っているのか?可能性はあるよ。別世界ならば、守るべき別世界のルールがあるだろう。ここのルールを少し変えればいい」
恭輔、気配だけだが、頭を撫ぜてあげた。
「自分に降りかかる不幸に変えるのさ。俺が、溶けたように、自分の幸福の代償を自分で補う」
恭輔の死を思い出すと、今でも涙が出てくる。恭輔は死体もなく、ただ消えてしまったのだ。
「俺を狙う奴を遠ざけたら、考えておく」
真里谷が立ちあがった。
「遊馬を頼む」
真里谷は玄関から出て行ったが、玄関の先で直ぐに消えた。
遊馬人形を見て、又、御形の母が、かわいいと大騒ぎしていた。一穂には何か感じるものがあるのか、初めましてとあいさつをしてから、握手を交わしていた。
「どこに置こうか?」
俺の結界も弱まっている。しかも、普通の人間ならば、玄関から入れる。
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