第1章

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「私の為ならば、こんな会は辞めて。私は分かり合える人と出会えて幸せだったよ。どうして否定するの?」  霊には霊の思いがあったようだ。他の実体化した霊も、家族に説明していた。  真里谷は存在悪で、周囲に死をもたらしてしまうが、本人を不幸にしている訳ではない。 「実体化したけど、どうやって成仏させようか?」  もう少し家族と面会させておくが、騒ぎが大きくならない内に、消さなくてはならない。  成仏させるには、玲二に頼むしかない。恐る恐る玲二に電話を掛けると、怒鳴られた後に協力してくれた。玲二が携帯電話から光りを操り、霊を光の元へ送ってくれた。  正義なんて無いと、分かってくれればそれだけでいい。真里谷を攻撃しても、不幸になるだけなのだ。  しかし一体、泣いているだけで、成仏していない霊体があった。玲二に情報を伝えると、それは生霊だと教えられた。 「何故、泣いている」  同じ年くらいの少女だった。言葉が聞こえるのが不思議というように、首を傾げていた。 「真里谷君が好きなの」  真里谷が好きならば、真里谷の元に行ったらいいのではないのか? 「振り向いて欲しいの」  可愛さ余って難さのクチなのかもしれない。放心状態の被疑者の会を、気付かれないようにそっと抜け出すと、少女も付いてきていた。街中で、やっと一息つくと、少女をまじまじと観察した。  実体化してしまって、まだ解けていないので、パジャマで出歩く少女になってしまっていた。俺が、上着を渡すと、驚いた顔をした。 「ずっと前から、真里谷君が好きなの。だから、真里谷君が別の子を見ているって、気付いていた」  俺は、恋愛相談には向いていない。直哉も横を向いていた。恋愛ならば、直哉の方が適役だろう。 「でも好きなの、同じ高校に進んで、同じクラスになれた」 「それで?」  真里谷は、遊馬しか見えていなかった。 「真里谷君の盾になって、真里谷君を困らせる者から守ろうって思ったの」  もしかして、遊馬の魂の傷はこの子のせいか。霊体ならば、霊体に攻撃が掛けやすい。 「遊馬は真里谷の、大切な人で困らせているわけではないよ」 「そうよね。それで、私、それが分かったショックで、肉体に戻れなくなってしまって」  真里谷の怒りを買ったのだろう。こういう場合は、どうしたら良いのだろうか?  路上で話していると人目を引くので、とりあえずコンビニに入った。
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