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連に相談すると、蓮の父の分野だと言われた。春日のレストランはディナーもしているので、夜は忙しい。事情は後で説明するとして、少女に春日の家の地図を渡した。
「自力でここに行ってくれる。ここの親父がどうにかしてくれる。で、もう霊体にならないでね」
少女が上着を返そうとしたが、俺はそのままでいいよと、再び上着を掛けた。歩いている少女の姿が、痛々しく去ってゆく。
他に真里谷の敵は何だ。
「残った敵は、俺達か…」
存在悪は善にはならない。遊馬をこのまま人形にしておくわけにもいかない。
真里谷を止められるのは遊馬だけだが、それには遊馬に危険がいつもつきまとう。
「始まりに戻そうか?」
真里谷を阿久津 愛斗に戻し、遊馬が同居する。本来あるべきだった姿に、もう一度戻してみる。母の無償の愛というのがあれば、真里谷の封印になるかもしれない。
例え善にならなくても、玲二の示したように、善を目指して生きていけるのかもしれない。
「真里谷を説得するか」
俺達は、真里谷の家に向かって走り出した。
第七章 クロスドール 2
真里谷の家に到着すると、先に御形が来ていた。
御形、手には遊馬人形を持っていた。他に、中身は何かは分からないが、遊馬の肉体も到着していた。
「御形?」
「調査だけさせておいて、俺を置いていくというところが、腹立つな」
御形、人形の持ち方が雑だ。子供と歩くように、手を繋いだように持っていた。
「ごめん御形、迷惑かけたくなくて」
真里谷の部屋のドアを開けると、そこには数人の黒服が居た。黒服は、銃らしき物を持ち、銃口が真里谷に向いていた。
「真里谷」
銃で撃たれるような真里谷ではないが、銃を持った人間が日本に居るということは、問題だった。
「真里谷、誰、この人たち」
「知らない、急に訪ねてきた」
俺達の姿を見ると、真里谷が黒服を消した。
「どこに消したの?」
聞きたくないが、気になった。
「日本海溝」
真里谷、冗談なのか本気なのかよく分からない。
「それで、何の用?」
真里谷が、お茶セットを取り出してきた。でも煎れるのは俺らしい。せっせとお茶の用意をしていると、真里谷が祭壇のようなものを出してきた。
「俺に何かあったら、遊馬がこのままになるからね」
祭壇の横に、遊馬の肉体を横たえる。
「ほら、黒井、遊馬の魂を目覚めさせて」
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