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ほいほいと出来るものでもないが、真里谷の言い分も一理ある。真里谷に何かあったならば、遊馬はずっと人形のままだ。
「恭輔、人形の中の魂を起こして」
「はいよ」
恭輔の声が聞こえた。
「なあ真里谷、遊馬の体の中に入っているのは何だ?」
妙に忠実で、人懐こい何かが遊馬の肉体の中に居た。
「昔、飼っていた犬だけど」
遊馬の体の外に出たら、成仏させてあげよう。死んでまで真里谷に飼われているのは、可哀想だった。
「起こしたよ」
恭輔の声と共に、何か温かいものが通り過ぎた。
真里谷が遊馬の心臓に手を当てると、一旦遊馬が眠りにつき、そして目が開いた。
「遊馬、愛している」
真里谷の言葉に固まってしまった。御形も平気でその台詞が言えるが、聞いている方が恥ずかしい。
「真里谷、愛斗?」
今度は中身も遊馬らしい。
「二人揃ったところで、提案なんだけど、阿久津の家に戻れよ。これが、一番良さそうだ」
母親が子供を守る、一番の結界だと、必死に説明したが、真里谷は無表情だった。
「遊馬を守るためだよ」
直哉の言葉に、真里谷が激しく動揺する。
「いいだろう」
阿久津の家に、真里谷と遊馬が戻ることが決定した。
これで解決となる筈だ。時々、阿久津の家を覗きに行ったが、家族は忙しく平和に暮らしていた。
俺は、又、母の霊能力者と、蓮の居る、占いの館でのアルバイトに精を出していた。
全て、元に戻った筈だった。
直哉と蓮の占いの館でアルバイトをしていると、人形が持ち込まれた。
夜中に助けてと叫ぶ人形。占いの館であって、ここは心霊現象の専門家ではない。しかも、人形はもう懲りたと思いつつも、手に取ってみて絶句した。
遊馬人形だった。しかも、人形内に幾体もの魂が封じられていた。
「どこでこの人形を入手されましたか?」
「フリーマーケットです」
売主は不明だった。一体何が、遊馬に起こっているのだろう。直哉が千里眼で見ても、ごく平和に暮らしていた。
「この人形は、危険な状態です」
内包する魂は、一体幾つあるのだろうか。持ち主は気味が悪いと、人形を置いて帰ってしまった。
人形に入っているのは遊馬ではない。
「真里谷…」
真里谷に会って話をしよう。
人形は一体に納まらなかった。御形の家にも、次々に喋る人形、瞬きする人形、泣く人形と運び込まれてきた。
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