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二階建てで、古い旅館の趣がある。一階、二階共に、外側に廊下があり、中に向かって部屋になる。一階は一間で祭壇があった。祓いなども、ここで行う。
二階は両親と、祖母の部屋と客間で、本人の許可なく、見せることはできない。
「俺の部屋は、離れ」
母屋から連なる建物に、居間や風呂、台所など生活空間が作られている。そこから又少し離れ、納屋の二階を改造したところに俺の部屋がある。
母屋とは、一旦外に出ないと行き来できない不便さはあるが、とりあえず広い。三室あるが、俺一人で使用していた。リビングの奥に、寝室がある。開いているもう一室は、玲二が泊まったり、直哉が泊まったりと使用していた。
納屋の一階部分に、トイレと簡単なキッチンがあるので、引きこもりにも便利だった。納屋は、昔の作業場?何かを栽培していた名残だったが、使われていなかった。
ちなみに姉の部屋は、母屋に在ったのだが、今は客間に改造され、姉は街のマンションに暮らしている。
「ここで、育ったのか」
窓を開けると、木しかない。
「そうだよ」
信者が多くなってからは、よく引き籠った。
「近くに幼馴染が住んでいてさ、林業の息子と、この山に温泉旅館があってそこの息子とか。とにかく、よく遊んでいた」
「幼馴染の話なんて聞いたことがない」
そういえば、御形に幼馴染の話はしたことがない。
「この山の反対側は、他県になる。俺は中学まで、山向こうの住所を使っていた。で、他県の中学に通って居た。そっちの方が、近かったから」
山を降りたら直ぐに学校があるのだ。
「でも、高校はこっちに来てしまったのだよね。霊能力者の家ってことで、中学でも避ける人が多かったから、ちょっと離れてみたかった、それにあれこれあってね。結局、どこでも、同じだったけどね」
あれこれ家から離れようとしてみたが、逃れられなかった。
幼馴染達は、違う高校に行き、今は滅多に会うことがない。
「黒井の素顔って聞いたことが無かった…」
御形が驚いていた。そんなに秘密主義であった覚えはないが、身構えて暮らしていたのは確かだ。
ちなみに直哉は従兄なので、この部屋によく寝泊まりしている。
「何だ、この模型」
棚に飾られている、恐竜の模型を見つけられてしまった。
「ミニカー?」
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