第1章

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 二階建てで、古い旅館の趣がある。一階、二階共に、外側に廊下があり、中に向かって部屋になる。一階は一間で祭壇があった。祓いなども、ここで行う。  二階は両親と、祖母の部屋と客間で、本人の許可なく、見せることはできない。 「俺の部屋は、離れ」  母屋から連なる建物に、居間や風呂、台所など生活空間が作られている。そこから又少し離れ、納屋の二階を改造したところに俺の部屋がある。  母屋とは、一旦外に出ないと行き来できない不便さはあるが、とりあえず広い。三室あるが、俺一人で使用していた。リビングの奥に、寝室がある。開いているもう一室は、玲二が泊まったり、直哉が泊まったりと使用していた。  納屋の一階部分に、トイレと簡単なキッチンがあるので、引きこもりにも便利だった。納屋は、昔の作業場?何かを栽培していた名残だったが、使われていなかった。  ちなみに姉の部屋は、母屋に在ったのだが、今は客間に改造され、姉は街のマンションに暮らしている。 「ここで、育ったのか」  窓を開けると、木しかない。 「そうだよ」  信者が多くなってからは、よく引き籠った。 「近くに幼馴染が住んでいてさ、林業の息子と、この山に温泉旅館があってそこの息子とか。とにかく、よく遊んでいた」 「幼馴染の話なんて聞いたことがない」  そういえば、御形に幼馴染の話はしたことがない。 「この山の反対側は、他県になる。俺は中学まで、山向こうの住所を使っていた。で、他県の中学に通って居た。そっちの方が、近かったから」  山を降りたら直ぐに学校があるのだ。 「でも、高校はこっちに来てしまったのだよね。霊能力者の家ってことで、中学でも避ける人が多かったから、ちょっと離れてみたかった、それにあれこれあってね。結局、どこでも、同じだったけどね」  あれこれ家から離れようとしてみたが、逃れられなかった。  幼馴染達は、違う高校に行き、今は滅多に会うことがない。 「黒井の素顔って聞いたことが無かった…」  御形が驚いていた。そんなに秘密主義であった覚えはないが、身構えて暮らしていたのは確かだ。  ちなみに直哉は従兄なので、この部屋によく寝泊まりしている。 「何だ、この模型」  棚に飾られている、恐竜の模型を見つけられてしまった。 「ミニカー?」
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