第1章

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 全員の名前は忘れていないが、呼んでいたらきりがない。志島が、自分の隣に座れとばかりにスペースを開けてくれた。開いた場所に座ると、改めて全員の顔を見る。  一年は経過していないが、その前までは毎日のように会っていたので、長く会っていなかった感じがしていた。 「志島、ずるいな、いつも。黒井は志島のもんじゃないぞ」  俺は、確かに志島の持ち物ではない。 「いいの。久し振りだから、触りまくりたいの」  志島、口調はくだけているが、非常に硬派な性格だった。ある意味、番犬に近い。 「黒井に会いたかっただけだよ、皆」  宗像の部屋は、十畳程度の和室と、窓辺に縁側のようスペースがあり、結構広いのだが、こう人が集まると狭く感じた。  久し振りに集まり、話題も尽きないが、俺は一泊二日だった。急ぎ、声と影の出る部屋というのに向かってみた。  部屋と廊下、屋根裏に声がしたり、影が動いたりするらしい。  俺は、霊は見えない。 「黒井、そこ影」  すごい速さで影が動いた。子犬のような大きさなので、人間ではない。  頻繁に出るので、元々宿泊用の部屋だったのだが、物置になっていた。 「そこ、あっち」  よく動く影だった、次第にムキになってきた。からかうように、影が移動する。時折、人間の頭にも乗る。  この影、絶対、捕まえてやる。  全員で目配せをして、連携を取る。一気に追い詰めると、影から小さな鳴き声がした。 「犬?」  犬の霊なのだろうか。でも、違う。俺の実体化していない羽にぶつかったのだ。俺は、影がぶつかった衝撃で後ろに飛んでいた。志島が俺を、宗像が影をキャッチしていた。 「黒井、大丈夫か?」  押入れの前で、志島がキャッチしてくれていたが、物を壊さなくて良かった。 「ありがとう」 「こっちも、何か捕まえた。黒井の羽にぶつかって脳震盪みたいだ」  宗像が影を掴んで振っていた。影は次第に実体化し、もこもこの小型版の狛犬になっていた。  その前に、今、宗像は羽と言ったような気がする。 「あの、宗像」 「もこもこの子供かこれ。もこもこに問いただそう」  皆、何も無かったように、外に出てゆこうとする。 「宗像、羽、いつから見えていた?」 「最初から見えていたよ。他のメンバーも、今は全員見えている」  そうだったのか。色々と思い当たる節はあった。俺は、最近まで自分の羽は見えていなかった。
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