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「好きだ、黒井」
確かに、俺も御形が好きだが、恋人同士でべったりというのには、今も慣れない。
「御形。後ろではなく、隣に座れ」
いいよと言いつつ、御形が俺の背に手を回してくる。首にキスをした御形が顔を上げる。御形の瞳は深くて、いつも目を逸らす事ができずに捕まってしまう。御形が、俺の頭をしっかり押さえ、おもいっきり深いキスをしてきた。息を止めるつもりか?と疑いたくなるくらいに、御形が口を塞いでいる。
御形、不安になるとキスが激しくなる。何が今回は不安にさせるのだろう。
御形が、唇にキスをしながら、押し倒してきた。一つ屋根の下に住んでいるが、俺達は清い関係だ。
俺は、御形を手で押しのけると、起き上がった。同じ家に住んでいるので、家族の目もあり、進まない関係なのかもしれない。
乱れた服を直すと、不服そうな御形が正面に座った。学校では、ファンクラブもある御形は、いつも表面は穏やかで清々しい。しかし、こうやって俺を不服そうに睨んでいるときは、その面影もない。
「真里谷。俺には見えるからさ」
御形が、俺にはグランドにしか見えない場所を指差した。
「真里谷は、霊なのか?」
俺、心霊写真の霊も見えないとは知らなかった。
「違うな、霊じゃない。生きてそこに存在していたと思う。でも、多分、生きて存在していたからと言っても、同じ場を共有しているわけではないという感じだ」
全然、意味が分からない。真里谷は、存在していたが、この世界の人間ではないようなものか?
「黒井は天に近いというか、天使だ。天の世界が見えるが霊は見えない。同じ幅が見えるとすると、天が見えている分、他が見えないわけだよな」
俺は天を見ているわけではないが、霊は全く見えない。
「真里谷は、霊よりも深い世界に居るというか、生きたまま霊を越しているというか」
生きているが霊だと考えたら良いようだ。そうすると、俺が真里谷を見つけるというのは、奇跡に近い。
「でも、真里谷は居るわけだよね?」
「いる」
それならば、どうにかするしかない。
「俺、遊馬のところに行ってくる…」
「それ、それが心配。遊馬、真里谷の思い人だろう。いいやつで、かっこいいよな」
いくらいい奴で、かっこいいとしても、それがどうしたと言うのだ。
「それがどうした」
「黒井、遊馬に惚れないようにな」
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