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「勇者様……」 僧侶は呟く。
「さっさとやっちまおうぜ!」
戦士は引き締まった腕に握られた斧を担ぎ上げて、構える。
勇者と同様、魔王の気に感づいたのか、僧侶は冷や汗をかきながら勇者を呼ぶ
「あの者は、今までに感じたことのないほどの力を感じます、ご用心を」
「おう!魔王、平和な世界にするため、ここで死んでもらう!」勇者は叫ぶ。
「援護は任せてね」と、魔法使いは言う。
彼女も杖を構え、いつでも魔法を放てる体制だ。
「ふん!頼もしい仲間だな」
魔王の言葉に、皆がプレッシャーを感じる、ただその口から発せられる言葉だけでも、並みの人間なら意識を刈り取られていただろう。
「だがな勇者、余は知っているぞ、貴様らが余を前にして勇敢に戦える理由をな」
「…なんだと?」
「ふふ、余がただ、何もせず貴様らが来るのを待っているとおもっていたのか?その貴様らの希望が、地獄であったことを教えてやろう」
魔王は、顔に微笑を浮かべると、王座から腰を上げた。
「くるぞっ!!」
――仮に、この場に、村人がいたとしよう。その村人の目には、魔王が席を立った瞬間、勇者一行と魔王がその場から消えたように見えただろう。
次に起こるのは、爆炎と粉塵、しかしその粉塵も刹那の間に切り裂かれ霧散する。
魔王の間には今、常人ならかすっただけでも致命傷になりうる暴力が錯綜していた。
「風よ荒れ狂え、全てを薙ぎ払え!疾風極大魔法エアソニック!」
魔法使いが放つ巨大な衝撃波が、魔王めがけ音速で突き進む。
「ふん」
魔王の手の一振りで、魔法使いが生み出したものと同じレベルの衝撃波が発生する。
同規模の魔法が激突し、相殺された。
「全能力強化魔法!」
僧侶の魔法が、勇者と戦士のステータスを跳ね上げる。
そして風の衝突により発生する粉塵を突き抜け、戦士と勇者が魔王に切りかかった。
戦士の重い斬撃と、勇者の素早い斬撃が息の合ったコンビネーションと共に、音速で放たれる。
「ふははは」
その攻撃を、魔王は両手の上腕のみで受けきってみせた。
刃と腕が激突するたびに、金属音と火花が散る。
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