30人が本棚に入れています
本棚に追加
「我は汝と契約を結ぶものなり、雷を司る神よ、汝の裁きを今ここに振り下ろせ!極大雷撃魔法シャイニングボルト!」
詠唱と共に、勇者の両手が突き出された。
腕の動きと連動するように放たれる強大なプラズマが、魔王へ向け稲妻の速度で迫る。
「っく!」
魔王はサイドステップでその雷撃を避けた。
「うぉぉおおおおおッ!!」
「!」
魔王が避けた雷撃の直線状に移動する勇者。
自身の放った魔法を追い越し対面した勇者は、迫る雷撃を両刃で受け止める。
雷撃を纏った二振りの呪刃を振り上げ、勇者は魔王に迫る。
(これで――)
「なにッ!!?」
(終わりだァァぁアあああアッ)
雷刃が魔王へ
アドレナリンの上昇と共に、勇者の意識が狂気に飲み込まれた。
しかし関係なかった。
ここまでくれば、もはや意識の有無は関係ないのだ。
この刃が届けば――勝つ
魔王の拳が、勇者の二刀の刃と交錯するように放たれる。
クロスカウンター
それは勇者の刃が魔王に届く――よりも速く
勇者の顔面を打ち抜いた。
(勝――)
勇者は、頭を起点に体を錐もみさせさせながら吹き飛び、地面を何度もバウンドし、壁に体を打ち付けた。
強烈なカウンター攻撃である。
それは勇者の意識を削ぐのに十分以上の成果を上げた。
体をピクピクと痙攣させるが、勇者は倒れた姿勢のまま、起き上がる気配はなかった。
(……信じられん)
魔王は冷や汗をぬぐう。
危なかった。 少なくとも勇者との戦闘で命の危険を感じたのは初めてである。
そんな状況にまで追い詰められたことに、魔王は戦慄する。
あの絶望的な戦力差が、ここまで詰まることに、驚きを禁じ得ない。
認めるだけでは足りなかったのだ。
この勇者は、確実に我ら魔族の脅威となりうることを
魔王はこの時、初めて確信した。
最初のコメントを投稿しよう!