第三章

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「我は汝と契約を結ぶものなり、雷を司る神よ、汝の裁きを今ここに振り下ろせ!極大雷撃魔法シャイニングボルト!」  詠唱と共に、勇者の両手が突き出された。  腕の動きと連動するように放たれる強大なプラズマが、魔王へ向け稲妻の速度で迫る。 「っく!」  魔王はサイドステップでその雷撃を避けた。 「うぉぉおおおおおッ!!」 「!」  魔王が避けた雷撃の直線状に移動する勇者。  自身の放った魔法を追い越し対面した勇者は、迫る雷撃を両刃で受け止める。  雷撃を纏った二振りの呪刃を振り上げ、勇者は魔王に迫る。 (これで――) 「なにッ!!?」 (終わりだァァぁアあああアッ)   雷刃が魔王へ  アドレナリンの上昇と共に、勇者の意識が狂気に飲み込まれた。  しかし関係なかった。  ここまでくれば、もはや意識の有無は関係ないのだ。  この刃が届けば――勝つ  魔王の拳が、勇者の二刀の刃と交錯するように放たれる。  クロスカウンター  それは勇者の刃が魔王に届く――よりも速く  勇者の顔面を打ち抜いた。 (勝――)  勇者は、頭を起点に体を錐もみさせさせながら吹き飛び、地面を何度もバウンドし、壁に体を打ち付けた。  強烈なカウンター攻撃である。  それは勇者の意識を削ぐのに十分以上の成果を上げた。  体をピクピクと痙攣させるが、勇者は倒れた姿勢のまま、起き上がる気配はなかった。 (……信じられん)  魔王は冷や汗をぬぐう。  危なかった。 少なくとも勇者との戦闘で命の危険を感じたのは初めてである。  そんな状況にまで追い詰められたことに、魔王は戦慄する。  あの絶望的な戦力差が、ここまで詰まることに、驚きを禁じ得ない。  認めるだけでは足りなかったのだ。  この勇者は、確実に我ら魔族の脅威となりうることを  魔王はこの時、初めて確信した。
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