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……
勇者は、目を覚ました。
場所は…牢獄の中、格子の向こう側に毒々しい色の花が見える。
勇者は、戦慄した。
この場所で明瞭な意識があることに、こちらに手をかざす神父の姿に、その傍らで無表情にこちらを見下す魔王に
勇者は視線を自分に向ける。砕け散った装備の破片が床に散乱している。 解呪呪文で装備をはがされたのは明らかだ。
…と、いう事は…
「すまない…勇者」
猿ぐつわをかまされた口を開き、勇者は、愕然とした表情で神父の男を見つめた。
信じられなかった、女神に忠誠を誓った神父が、解呪魔法を会得すほどに信仰深い神父が、魔王に寝返るなど…
神父は勇者の心臓に手をかざす。
勇者は知っていた、その行為の意味を
心臓に注がれる微弱な聖魔法
それが心臓にポンプされる血流にのって全身を行き渡り、体内のオルガを死滅させた。
「……ッ」
体のだるさが嘘のように消えてゆく。
勇者はただ茫然と神父の男を見つめていた。
今になっても信じられない。
この目が見たものを確信できない。
なぜ? なぜ? なぜ?
「……」
神父は勇者の視線か逃れるように顔をそらすと、口を開いた。
「私は…間違っていない…女神様は…見てくださっている……」
「な!?」
「勇者…これからあなたに与えられる試練を乗り越えれば、きっとあなたも私のことをわかってくれるだろう…………」
神父はそれだけつぶやくと、逃げるように牢から出て行った。
神父とすれ違うように魔王が勇者の前に立つ。
「ッ」
勇者は魔王を睨む。
そんな勇者に対し、魔王は不敵な笑みを浮かべた。
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