第四章

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~~~~~~~~ ……  勇者は、目を覚ました。  場所は…牢獄の中、格子の向こう側に毒々しい色の花が見える。  勇者は、戦慄した。  この場所で明瞭な意識があることに、こちらに手をかざす神父の姿に、その傍らで無表情にこちらを見下す魔王に  勇者は視線を自分に向ける。砕け散った装備の破片が床に散乱している。 解呪呪文で装備をはがされたのは明らかだ。 …と、いう事は… 「すまない…勇者」  猿ぐつわをかまされた口を開き、勇者は、愕然とした表情で神父の男を見つめた。  信じられなかった、女神に忠誠を誓った神父が、解呪魔法を会得すほどに信仰深い神父が、魔王に寝返るなど…  神父は勇者の心臓に手をかざす。  勇者は知っていた、その行為の意味を  心臓に注がれる微弱な聖魔法  それが心臓にポンプされる血流にのって全身を行き渡り、体内のオルガを死滅させた。 「……ッ」  体のだるさが嘘のように消えてゆく。  勇者はただ茫然と神父の男を見つめていた。  今になっても信じられない。  この目が見たものを確信できない。  なぜ? なぜ? なぜ? 「……」  神父は勇者の視線か逃れるように顔をそらすと、口を開いた。 「私は…間違っていない…女神様は…見てくださっている……」 「な!?」 「勇者…これからあなたに与えられる試練を乗り越えれば、きっとあなたも私のことをわかってくれるだろう…………」  神父はそれだけつぶやくと、逃げるように牢から出て行った。  神父とすれ違うように魔王が勇者の前に立つ。 「ッ」  勇者は魔王を睨む。  そんな勇者に対し、魔王は不敵な笑みを浮かべた。
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