第四章

12/14
前へ
/104ページ
次へ
「もう一つ、話しておこう、女神についてだ。そもそも、なぜ余が人間界に攻撃を仕掛けるかわかるか?女神…つまり神族の力は、人間の信仰心から得られるからだ」 「…!」 「魔族はな、鼻から人間界の支配など興味はないのだよ、神族の家畜のお前らを駆除し、力を弱めたところを叩く作戦なのさ」 「……」  家畜、その言葉が、いやに耳に残る。  家畜だから…助けてくれない?  家畜だから…こんな目にあっても、細々構っていられないってことか?  いや、だとしたらおかしいはずだ、いうなれば人間は食糧、それが今なくなろうとしているときに、神が干渉してこないのはおかしいではないか 「一つ言っておくが、神は干渉しているぞ」  勇者の思考を読み取ったかのように、魔王は言った。 「!」 「人間界が一つだけだとでも思ったのか?」 「……!?」 「より人口の多い世界では、神の使いである天使と魔物が熾烈な戦いを繰り広げている、この世界は、数ある人間界の中でもっとも小さい世界だ」 「……ッ」 「神はこの世界をとっくに見放しているのさ、だからこそ、余はここで人間界の研究が行えているわけでもあるがな」 「……」 「いかに自分が小さい存在か、わかったか?」 「……」 「さて、本題に入ろうか」  魔王はそういうと、片手を上げた。  うめき声を上げる肉団子が、魔物に運ばれ牢の前に並べられる。 「…っ」  魔王がパチンと指を鳴らすと肉団子が人間の形へと戻った。  皆ぐったりしている。  突然の苦痛からの解放、しかし、体は震え、うまくコントロールできないようだった。  そんな中で、最も長い期間肉団子として過ごしてきた女が、弱弱しく勇者を見、そして言った。 女「勇者…様……助げて…」 「っ」 「連れて行け」  魔王の命令を受け、魔物が五人を引きずっていく。 「勇者、一日待つ、明日、信仰を捨てていれば、あの者どもは生かしたまま元の村に返そう、約束する」 「……ッ」
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加