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「……」
「……勇者…か?」
「……!?」
勇者は目を見開く。
辺りを見渡し、見慣れた祭壇に立っていることを確認する。
(死んだ? 俺が……)
なぜ? どうやって……?
疑問が頭の中でループする。
そんな勇者の横で、まばゆい光がはじけた。
「…ふう」
粒子を散らしながら、司祭が勇者の横に立つ。
「お前が…助けてくれたのか?」
「……ッ!」
司祭は、驚いた。
白く染まった髪、こけた頬、痩せこけた体。
腕や目元が、小刻みに震えている。
それだけで分かった。
この半年間、どんな状況に勇者がいたか。
助けだせてよかったと思う。
しかし同時に……また別のことを司祭は考えずにはいられなかった。
この勇者に……この弱り切った若者に……はたして魔王が倒せるのか?
倒さなければならないのだ。
もはや後戻りはできない状況なのだ。
しかしその勇者がこのありさまでは――
「…ああ、無事…でよかった」と司祭は言う。
「無事だと?」
勇者の顔が強張る。
勇者の気配が変わったことに、司祭は緊張を高めた。
「お前このありさまを見て…本気でそう思ってるのか―」
兵士「勇者さま」
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