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勇者の言葉は、突然教会へ入った数名の兵士によって途切れた。
勇者を見た兵士の目が驚きに染まる。
しかし兵士は事務的といった様子で言葉をつづけた。
兵士「王がお呼びです、ご同行願います」
「……!」
勇者は泣き出しそうな顔になった。
「まってくれよ……疲れてるんだ……後にしてくれないか?」
「勇者、行け。」司祭はそう言い放つ。
「!?」
勇者は信じられないといった顔で司祭を見た。
「…俺のこのざまを見て、お前はそんな事を言ってんのか!!?」
勇者は司祭へ向け怒鳴る。
「ああそうだ、行け」司祭は変わらずそう言う。
「お前……っ!」
司祭は、キッと勇者を睨みつける。
「お前は…堂々と勇者らしく……弱音を吐かず行け!!」
「ふざけんな……俺があの場所でどんな…」
「…頼むから!!」
司祭は叫び声を上げた。
「頼むから!! 弱い言葉を吐かないでくれ! 頼むから! 堂々としていてくれ! そうじゃねぇとみんなが浮かばれないんだ!!」
悲鳴に近い声で司祭は勇者に言う。
「は?みんな……? みんなって」
「3万人だ。」
「!?」
「勇者奪還作戦に参加した命の数だ」
「は?」
「お前を助けるために、軍の人はもちろん、田舎の農民達も、みんな命を捨てて魔王に挑んだんだ」
「3…万?」
司祭の瞳から涙がこぼれる。
志半ばで息絶えた若者を知っているから。
皆に思いを託し、死に絶えたものを知っているから。
「魔王城での決戦になれば、誰も生きて帰れないと覚悟しながらもな! 実際みんな魔王に殺された! だが、お前はここにいる! この意味が、分かるか!?」
「……っ」
勇者は、顔をゆがめる。 そんな勇者の両肩をつかみ、司祭は懇願するように口を開く。
「だから勇者……頼むから……みんなの覚悟を、思いを、無駄にしないでくれ……っ」
「……」
勇者は茫然と、司祭を見つめる。
3万…? 俺を救うために?
そんな……
俺を助けて……
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