第五章

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 勇者の体が、ブルリと震えた。  このまま、均衡を保つこともできないのか……  時間の問題か……くそ  一度震えだした体は、勇者の制御を外れ、ずっと震え続けている。  震える口で、勇者は口を開く。  女神の信仰を捨てる方法は、簡単だった。  女神を貶める言葉を、吐けばいい。  思うだけでは駄目なのだ。  その想いを、心の底から声に出すことで、初めて信仰を捨てることができる。 「このく――」  声を発し始めた口を、勇者はとっさに手で塞いだ。  かつてともに旅をした仲間達が、自分の所為で苦しんだ人たちが、自分の為に死んだ人たちが  勇者にそうさせたのだった。 勇者「…くそ……くそおぉぉおおぉ……」  口を手で塞いだまま、くぐもった声を上げながら、勇者は涙を流した。
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