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自分の息遣いが、いやに大きく聞こえる。
女戦士「……」
女戦士は震える体を何とか抑えつけようと、両手で体を抱いた。
恐れるな、恐れるな
女戦士は、そう何度も自分に言い聞かせる。
ある森林地帯と岩礁地帯の境目、木の影の隠れ、女戦士は先の岩礁地帯に目を向けた。
巨大な竜の頭が、岩礁地帯の岩の上から顔を出している。
「……ッ」
女戦士はとっさに首をひっこめた。
いる、この先に、魔王軍が。
女戦士は腰に下げた剣を抜くと、両手で握りしめた。
村のみんなのために。
殺されたって構わない。 このままのうのうと生きるくらいなら、せめて一矢報いてやる。
女戦士は、ぐっと歯を食いしばると、木から飛び出すように身を躍らせ、岩礁地帯へ駆け出した。
だが、突然の雷鳴と閃光が、女戦士の聴覚と視覚を奪った。
「!?」
光に目を細め、何とか先の景色を見る。
その先の景色は、雷の嵐が魔物どもを紙切れのように吹き飛ばす光景であった。
魔物の絶叫と雷鳴が空間を震わせる。
黒焦げになった竜が、地に倒れ大地が揺れた。
「……ッ??」
一体何が……
雷の雨が止んだ。
しかし女戦士は、いまだに視界に入ってる情報を、うまく処理できずにいた。
魔物が、魔王軍がひとりでに吹き飛んでゆくのだ。
ある一体は突然細切れになり。ある10体は同時に胴体と下半身が分断される。
場を支配する突風が、肉片を吹き飛ばす。
吹き荒れる衝撃波の余波だけでも、戦地から1㎞は離れている女戦士が、体が吹き飛ばされないよう力まねばならないほどだった。
また稲妻。
そして突風。
魔物の残骸が女戦士の横を転がってゆく。
血しぶきが衝撃波に乗り、女戦士を頬を汚した。
総勢1万を超えるであろう魔王軍が、次々とゴミのように吹き飛ばされてゆく。
「……なにこれ」
女戦士はそうつぶやきながらも、謎の力に蹂躙されてゆく魔王軍から目を逸らせずにいた。
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