第五章

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~~~~~~~~~  時間にして10分ほどたっただろうか。  女戦士は、戦場のど真ん中に立ち、あたりを見渡した。  岩の森とも言われるこの岩礁地帯には、10メートルを超える岩石がいくつも無造作に転がっていた。  しかし今、この岩礁地帯の一角に、岩と呼べるものはなく、砂と巨大なクレーターが点在する殺風景な景色が広がっている。  あたりには血の匂いはすれど血や、魔物の死体もない。  すべて原型も残らぬほどに破壊され、蒸発したのだ。  そんな異様な破壊の跡地、その場に立つ一人の男。  白髪を風になびかせ、どこか虚ろな目で地平線を見つめる男。 女戦士「……」  女戦士は確信する。 この男が  世界を旅している勇者なのであると。 ~~~~~~~~~  勇者不在の半年の間に、魔物の進撃は行われ、現状世界の7割は魔族の手に落ちた状況であった。  しかし、解放された勇者の働きにより、魔物の勢力図は瞬く間に後退する。  勇者は転移魔法により世界中を移動し、極限レベルの剣術と魔術で魔物に応戦した。  魔界から無尽蔵に送られ、数を増やす魔物であるが、その数が千であろうが万であろうが、所詮下級魔族である魔物など、勇者の敵ではなく、それこそ蟻を潰すように瞬く間に駆逐されていった。  各拠点に建造された魔族の塔も、勇者の雷撃魔法の一閃で吹き飛び、十万の数で進軍していた魔王軍も、たった一人の勇者を前に、一時間と持たず全滅した。  しかし勇者は、一度も魔王城へ近づこうとはしなかった。 ~~~~~~~~~~~~~
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