30人が本棚に入れています
本棚に追加
「やーみんな、ただいまー」
女戦士は朗らかに笑いながら、村の人々に手を振った。
広間に集まっていた村人たちが、一様に驚きの目で、女戦士を迎えた。
村人(男)「お……女戦士! お前無事だったのか!」
村人たちの中から、一人の若い男が前へ出る。
「まーねー、私にかかれば楽勝? みたいな」
「ばかやろう!! 村のみんながどれだけ心配したと思ってんだ!」
「もー、そんな怒鳴らないでよう、朗報を持ってきたんだから!」
「朗報……?」
「そうよ! 魔王軍は全滅した! これで村を手放さなくてすむよ! みんなの畑も大丈夫!」
女戦士は満面の笑顔と共にVサインを作った。
「!?」
衝撃が村人たちに走り、それは大きなどよめきに変った。
魔王軍が?
まさか
いやでも
信じられない
「……お前ついに頭おかしくなったのか?」
「あー、やっぱり信じてくれないか、じゃあ証拠を見せるよ!」
「証拠?」
「そう! こちらにおわす勇者様こそ、魔王軍を倒してくれた張本人なのです!」
女戦士はそういうと、大げさに手を振り、後方に立つ男を示した。
「勇者…」
村人たちの視線が一斉に女戦士の後方へと注がれる。
そこに立つのは、腰に一振りの剣を携え、布の服をきている痩せた男だった。
何よりも目を引くのはその白髪だ。まだ若い風体だというのに、その髪だけは、一本残らずすべて白一色であった。その下、どこか疲れ切った目がどんよりと中空を見つめている。
勇者には……もう見えない。
「本当に……勇者なのか?」
村人(男)は、疑わしげな視線を、勇者へ向ける。
「ほら勇者様、なんか証拠だして、このままじゃ村のみんなが信じてくれないよう」
女戦士はぼそぼそと勇者にささやく。
「……わかった」
勇者が答えると同時、勇者の額に光り輝く太陽の紋章が浮かび上がった。
村人(老婆)「おお……」
勇者様だ……
間違いない
女神信仰の中でも象徴的な太陽の紋章。
その紋章が刻まれたものこそ勇者であることを知らないものは、この世界には存在しない。
最初のコメントを投稿しよう!