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「……」
その一言に、勇者は眉を寄せる。
「お姉ちゃん、あの人誰?」
弟が、姉と話し込む男を見て、そう尋ねる。
「あー気づいちゃった?」
弟「いや、そんなに堂々とされたら誰でも気づくよ…」
「なんと! この方は! あの! 伝説の! みんなの憧れ! 勇者様なのです!!」
弟「へぇー」
勇者「!」
弟「あ…わー、すごい…本物なの?」
「…本物本物! 直に戦いを見た私が言うんだもん! 剣の達人である私が何が起こってるかわからなかったんだから間違いないって」
「剣の達人っていうのは引っ掛かるけど、そこまで言うなら本物なんだね…」
「…」
「ねぇ、お姉ちゃん」
「ん?」
「ちょっと…勇者様と、二人で話をさせてくれないかな」
「え? なになに? 内緒の話?」
「うん…ちょっと男同志で話がしたいんだ、お願い」
「えー、気になるなぁ、まぁいいか、可愛い弟の頼みだし、お姉ちゃんは買い物がてら退散するとするよ」
「ありがとう」
「いーえ、ごゆっくり」
女戦士は、そういうと扉を開け、外へとでた。
扉が閉まる。
「……わざとらしいな」
「! ……あのっ」
「他言する気はない」
「!」
「これで、満足か?」
「…やっぱり、気が付いてたんですね」
「……どうやって、神父をごまかしてる?」
「……うちは、祖父の時代からずっとこうなんです。 その縁で、目をつぶってもらっています」
「危ういな、小さな村なら誤魔化せるかもしれないが…いつばれてもおかしくない、そうなったら、身の安全は保障できないぞ」
「…僕も、姉も覚悟の上です」
「……本当か? 君は見たことがあるのか? 背信者の末路を、俺も何度か見たことがあるが、酷いもんだ」
「……」
「その時になったら、君たちは後悔するだろう」
「…バカげたことに命をかけるぐらいなら、入信すればいい、神父とパイプがあるようだし、洗礼を受ければそれで済む、それで君には神系魔法が効くようになり、今まで以上に快適な生活ができるぞ」
「……」
「姉に迷惑をかけることもないしな」
「!」
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