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「君が言い出せずにいるなら、俺から言ってやってもいい、そんな不自由な体は苦痛だろう? 」
「……」
「どうした? さきほどから黙っているが、何を悩む必要があるんだ? メリットしかないように思うが?」
「……理屈では…ないのです」
「!」
「この体が、姉に迷惑をかけていることも知っています、でも……もう知ってしまったから」
「…知った? 何を?」
「入信している人たち…女神を信仰している人たちの気持ち悪さ……です」
「勇者様は、おかしいと思いませんか? 何かに憑りつかれたように女神を信仰する人たちを……あの姿を見ていると……自分が自分じゃなくなるようで…怖いのです」
「…」
「勇者様にこんなことを言って、僕は天罰が下りますかね」
弟をそういって力なく笑う。
「……そんなことはしないさ、ただ、一つ聞かせてくれ。なぜ、俺にこんな話をする気になった? 下手すれば殺されているぞ」
「……女神様の使いともいえる勇者様ですけど…なんだか、他の人と違うように見受けられたので…」
「ほかの人と違う? よく意味がわからないな、どういう意味だ?」」
「……このどこか変な世界を……勇者様なら変えてくれる……予感……?」
とぎれとぎれに、何かを確認するように弟は言った。
「…まぁいい、君たちのことは黙っておくさ、それに…面白いこともわかった」
「?」
勇者は立ち上がると、家を出た。
女戦士「……!」
扉を開けたすぐ横で、腰の剣に手をかけた女戦士と目があった。
勇者「…騙しうちでどうにかなると思ったのか?」
女戦士「……まっさかー、ただ、このまま帰して大丈夫かなーって思っただけよん」
女戦士はそういって悪戯っぽく笑う。
勇者「村人から、襲われそうになったのも、初めてだよ」
勇者はそういって苦笑する。
女戦士「あら、そうなの?」
勇者「ああ、恥ずかしい話、今まで考えもしなかった、こんな人間がいる……いや、こんな人間になれるんだな」
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