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僧侶をこっそり司祭の家に帰した勇者は、行動を起こした。
勇者の号令の突然の招集にもかかわらずその席には国王をはじめ、国の中枢を担う人物たちが集まっていた。
皆が会議室の下座に立つ勇者に視線を向ける。
何せ勇者は皆を集める理由として言ったのである。
魔王達を倒す策を思いついた。 と。
参謀「皆もそろった、勇者よ、さっそくその策とやらを教えてくれ」
勇者「はい、それでは説明します」
勇者はそういうと、心の中で、構えた。
イメージは、仲間と一緒に戦闘している時だ、その時の心構えでもって、勇者は口を開く。
「全員、起立してください」
勇者の言葉に応え、皆が一様に起立をした。
「……」
「…勇者よ、これは一体なんの真似だ?」
王は起立したまま、怪訝な顔を勇者へ向ける。
「まずは、実際に体験してもらったほうが、説得力があると思いまして」
参謀「体験?」
「勇者の能力の一つ、命令です」
参謀「?」
「私から発せられた命令は、女神様の信徒ならば誰ひとり拒絶することなく、違和感を持つことなく、従わせることができる」
参謀「勇者、あなたは一体何を言っているんだ?」
「……突然の起立の号令に対して、あなた方は何も違和感を感じませんか?」
参謀「違和感といわれても」
参謀は府に落ちない様子だった。 勇者の命令に従うことが正しいとまるで疑っていないように。
「冷静に考えてみてください、突然起立と言われて立つ人間がいますか? それも全員、こんなこと普通ありえない、 違いますか?」
「……言われてみれば」
参謀はここでやっと半分納得したようだった。
「もちろんこの命令は、どんなことでもできるわけではありません。 たとえば信仰を捨てろなどの命令は、矛盾が生じるために拒否されます。 加えて、命令の内容が、された側の能力を超えている場合も同様です」
加えてこの能力は勇者が心の底から願った場合のみ、発動される。
それ故に、勇者は気が付けなかったのだ。
戦士、魔法使い、僧侶……仲間や、王が自分の思い道理に動いたことや、冒険の最中他国の住人や、重要人物から都合よく話を聞けたのも、思い返せばこの能力のおかげだったのだろう。
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