赤い人

11/16
前へ
/16ページ
次へ
この階段を下りれば、生徒玄関は目の前だ。 外に出られるならどこからでも良かったけど、結局ここになってしまうなんて。 一階に下りても三階に戻された恐怖が、再び私に襲い掛かって来る。 「お願い……一階に着いて!」 心の叫びが声となって私の口から飛び出した。 階段を駆け下り、踊り場を通り過ぎようとしたその時だった。 「お、おいコラ!畑中!畑中里奈!何を大声で走り回っているんだ!ちょっと職員室に来なさい!」 急ぐ私を引き止めるかのように、背後から声を掛けられたのだ。 この声は……担任の小池先生? 嫌な人に変な所を見られてしまったなと思う反面、一人ではなくなったという安心感で、私は安堵の吐息を漏らした。 さっき、明日香と理恵が一緒にいたわずかな時間、私が一人じゃない時は何も起こらなかったから、一緒にいてくれるなら誰だって良い。 「ごめんなさい先生!だけど私、ちょっと急いでるんです。あ、校門まで一緒に来てくれたら……」 と、そこまで言った時、私は気付いてしまった。 ペタ……。 ペタ……。 いつもならサンダルを履いているはずの小池先生の足音が……いつもと違う事に。 そして、立ち止まっている私に近付き、そっと肩に手を乗せたのだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

711人が本棚に入れています
本棚に追加