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この階段を下りれば、生徒玄関は目の前だ。
外に出られるならどこからでも良かったけど、結局ここになってしまうなんて。
一階に下りても三階に戻された恐怖が、再び私に襲い掛かって来る。
「お願い……一階に着いて!」
心の叫びが声となって私の口から飛び出した。
階段を駆け下り、踊り場を通り過ぎようとしたその時だった。
「お、おいコラ!畑中!畑中里奈!何を大声で走り回っているんだ!ちょっと職員室に来なさい!」
急ぐ私を引き止めるかのように、背後から声を掛けられたのだ。
この声は……担任の小池先生?
嫌な人に変な所を見られてしまったなと思う反面、一人ではなくなったという安心感で、私は安堵の吐息を漏らした。
さっき、明日香と理恵が一緒にいたわずかな時間、私が一人じゃない時は何も起こらなかったから、一緒にいてくれるなら誰だって良い。
「ごめんなさい先生!だけど私、ちょっと急いでるんです。あ、校門まで一緒に来てくれたら……」
と、そこまで言った時、私は気付いてしまった。
ペタ……。
ペタ……。
いつもならサンダルを履いているはずの小池先生の足音が……いつもと違う事に。
そして、立ち止まっている私に近付き、そっと肩に手を乗せたのだ。
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