711人が本棚に入れています
本棚に追加
赤い人
私の学校にはいくつか怪談がある。
自分の頭部をドリブルするバスケットボール部員の幽霊、上がってしまったら戻ってこられない階段など。
だけど、どれも作り話みたいで誰も本気にしていなかった。
そんな怪談の中に一つ、やけに内容が詳しいものがあった。
それが……「赤い人」の怪談。
数ある怪談の中で、どうしてこれだけが詳しく語られているのか、どうしてほとんどの生徒が知っているのか、私は知らなかった。
そう、本当にこれに巻き込まれるまでは。
「あれ?スマホがない。ポケットに入ってるはずなのに……」
放課後、掃除が終わって下校しようとしていた私は、どこを探してもスマホがない事に気付いた。
「里奈?何してんのよ。ほら、早く帰るよ」
友達の優香が教室の入り口で私を呼んでいるけど、スマホがないのに帰る事なんて出来ないよ。
あれがなかったら生きていけない!
「優香も一緒に探してよ、スマホがないの!」
「マジ?どこに落としたのよ」
ハアッと溜め息をついて、仕方ないなと言わんばかりに一緒に探してくれる優香。
だけど、カバンやポケットの中はもちろん、ゴミ箱や机の中にも私のスマホはなかったのだ 。
「もしかしてさ、音楽室じゃないの?里奈さ、授業中に弄ってなかった?」
最初のコメントを投稿しよう!