赤い人

15/16
前へ
/16ページ
次へ
振り返らないように移動し、廊下に出た私は、すぐそこにある職員玄関へと走った。 事務室の前を通り過ぎる際にチラリと中を見ると、事務員さんが慌てている私に目を向ける。 人がいる……これなら出られるかもしれない。 お願い、開いて! 私を校舎の中に閉じ込めないで! 祈るように心の中で叫び、職員玄関のドアに手を伸ばす。 そして……ぶつかるようにして押したドアは、白い手の邪魔もなくあっさりと開いたのだ。 「やった……良かった……」 この程度の事で心から喜べるなんて。 外に飛び出した私は、急いで校門で待つ優香の元へと走った。 早く学校から出たい、一人でいたくない。 そして、こんな事に巻き込まれるくらいなら、明日からはもう学校に来ない。 お母さんは怒るだろうな。幽霊が出るなんて言っても信じてくれないだろうし。 外に出て開放感があったからか、もう家に帰ってからの事を考えている。 走って走って、校門がすぐそこに見える所までやって来た。 優香もこちらに背を向けて、退屈そうにスマホを弄っている。 そんないつもと変わらない優香の姿に安心して、ボロボロ涙を流しながら……永遠とも思えるほどの時間が終わったんだと、校門を出た。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

711人が本棚に入れています
本棚に追加