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振り返らないように移動し、廊下に出た私は、すぐそこにある職員玄関へと走った。
事務室の前を通り過ぎる際にチラリと中を見ると、事務員さんが慌てている私に目を向ける。
人がいる……これなら出られるかもしれない。
お願い、開いて!
私を校舎の中に閉じ込めないで!
祈るように心の中で叫び、職員玄関のドアに手を伸ばす。
そして……ぶつかるようにして押したドアは、白い手の邪魔もなくあっさりと開いたのだ。
「やった……良かった……」
この程度の事で心から喜べるなんて。
外に飛び出した私は、急いで校門で待つ優香の元へと走った。
早く学校から出たい、一人でいたくない。
そして、こんな事に巻き込まれるくらいなら、明日からはもう学校に来ない。
お母さんは怒るだろうな。幽霊が出るなんて言っても信じてくれないだろうし。
外に出て開放感があったからか、もう家に帰ってからの事を考えている。
走って走って、校門がすぐそこに見える所までやって来た。
優香もこちらに背を向けて、退屈そうにスマホを弄っている。
そんないつもと変わらない優香の姿に安心して、ボロボロ涙を流しながら……永遠とも思えるほどの時間が終わったんだと、校門を出た。
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