赤い人

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そうだ……理恵は怖い話が大嫌いだったんだ。 突然目の前に現れて、「赤い人」を見てしまったなんて言ったら……。 「里奈、そういう話は後で聞くから。今は理恵がいるからやめよ?」 肩を掴んでいる私の手を除けて、歩き出した二人。 もう、私の後ろに移動して、振り返ってお願いする事も出来ない。 「赤い人」の事を言わずに、何も聞かずについて来てと言えば、もしかしたら大丈夫だったかもしれないのに。 二人の話し声が、廊下を曲がって小さくなって行く。 助かったと思ったのに、言葉選びを間違えてしまった。 結局一人になってしまい、呆然と立ち尽くしていた私の耳に、再びあの音が。 ペタ……。 ペタ……。 階段の方から聞こえる足音に、ハッと我に返った。 ダメだ、立ち止まっていたら、「赤い人」に追い付かれる。 一度安心してしまった心と身体が、また恐怖に支配され始めた。 逃げなきゃ……「赤い人」に追い付かれたらどうなるのかは分からないけれど。 震える足を前に出し、二階の長い廊下を走り出した。 静かな廊下、部活に入っていない生徒のほとんどは帰ったのだろう。 それが心細くてたまらない。 そんな事を考えながら、廊下が交差する場所に差し掛かった時だった。 左の廊下から、白い手が私に向かって伸びたのだ。
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