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お父さんの葬儀すらままならないほどの、苛烈な債務の取立てや、お母さんの医療費の工面。
途方に暮れるばかりで、どうすればいいのかすら分からなかったと、
だから、伯父さんの差し伸べてくれた救いの手に、一も二もなくすがったと、
それしかできなかったのだと、東悟は語った。
「これで、全部だ。もう、隠し事はないよ」
長い、長い告白の後、
東悟の顔に浮かんでいたのは、何かが吹っ切れたような、穏やかな微笑。
そんな顔を見ていたら、私の方も、何かが吹っ切れそうな気がした。
――ううん、
吹っ切らなきゃ、いけないんだ。
ずうっと、心の中に降り積もり続けていた、東悟への恋心。
もう、底抜け寸前にまで積もりに積もったこの想いに、終止符を打つ。
そのためには、もうひと押し、決定打が必要だ。
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