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シンと、静まり返った深夜の病室に、穏やかな声が、優しく響く。
「ありがとう」
「……え?」
――お礼を、言われてしまった。
なんに対する礼の言葉なのか、把握できない私は、疑問の眼で課長を見つめ返す。
「また、名前を呼んでもらえるなんて、思ってもいなかった」
伸びてきた大きな手のひらが、私の頬を優しくなぞる。
――温かい。
親指の腹で、涙の後をそっと拭うと、手のひらは、静かに離れていく。
その温もりが、名残り惜しくて、
私は思わず、身を乗り出し、両手で課長の手のひらを、はっしと掴んでしまった。
引っ込めようとした手を、鷲掴みされた課長は、驚いたように、目を丸めている。
そりゃそうだ。
いきなり泣き出したと思ったら、次はコレだ。
課長の驚きは、もっともだ。
一番、私自身が驚いている。
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