25 抱擁-2

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「俺は、あの時、何の力も持たない、ただの青二才だった……」 穏やかすぎるほどの静かな声音に、当時の東悟の心中を垣間見せるものは、まったく感じられない。 でも、だからこそ、その痛みを身の内に秘め続けている気がして、胸の奥が軋むように痛んだ。 あの時、打ち明けてくれたら、よかったのに。 そう思う気持ちと、 あの時、打ち明けられていたら、 私に、何ができたのだろう? そんな、相反する気持ちが、私の中でモヤモヤと渦を巻く。 冷静に考えるなら、たぶん、何もできなかった。 東悟が、一介の大学生に過ぎなかったように、私も、東悟に恋をする、ただの十八歳の女の子に過ぎなかったのだから。 それを痛感していたから、東悟は、私に真実を告げずに姿を消したのだろう。 ――でも、それでも。 私は、打ち明けてほしかった。
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