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まるで、両手と両手を握りあった恋人同士――
に、見えなくもないこの状況に、ただでさえ過負荷気味の脳細胞は、仕事を完全に放棄してしまった。
――頭、真っ白だ。
何も、考えられない。
そうしている間にも、課長の顔が、近づいてくる。
――う、うわぁ!?
「自分じゃ分からないから、測ってくれるか?」
「……え?」
測って……って、熱を?
あ、なんだ、そういうことか。
『ん?』と、額を突き出す課長の瞳には、悪戯を思いついた子供のような、楽しげな笑みが浮かんでいる。
両手を封じられて額を出されたら、残る熱を測るための方法は、ただ一つしか浮かばない。
――あ、遊ばれてる。
「前の時は、こうして測ってくれただろう?」
「え……?」
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