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いつからだろう。妹・ヒナタの未来がなんとなくぼんやり分かるようになった。どうやら兄・キョウスケはそんな能力はないらしい。
大切な妹を幸せに導けるなら、こんな素晴らしいことはないと思った。
ただ……この力がきっかけでオレと兄があんなことになるとは思ってもみなかった───。
◇◆◇◆
キーンコーンカーンコーン────
陽が落ちるのがすっかり早くなり外はもう夕暮れ時というころ、学校中に下校の時刻を告げる鐘が鳴る。
すでに数えるほどの生徒しか残っていない教室の中、窓際の後ろから二番目の席でヒナタはゆっくりとランドセルに教科書をしまっていた。
色素が薄めの大きな瞳とピンク色の唇、生まれつき茶色がかった艶のある髪は可愛く三つ編みにして水玉のリボンで結んでいる。
まさにお伽話に出てくるお姫様のような可愛さと誰とでも仲良くなれる人懐っこい性格も加わり、男の子はもちろん女の子にも人気があった。
いつもは笑顔であふれている顔が、夕日に照らされた今はどことなく寂しそうに見える。
「ヒナタちゃん、いっしょにかえろ?」
「あたしもかえろー?」
「うん、いいよー」
自分の身体からすると大きめの真っ赤なランドセルを背負いながら、さっきまでの沈みかけた顔を内に隠すように笑顔で答える。
「あ、おい、オマエら! あぶねーからオレがいっしょにかえってやるよ!」
「ずりー! オレがかえってやろうとおもってたんだぞ!」
「えー。そういって、あんたたちヒナタちゃんといっしょにかえりたいだけでしょー?」
「バ、バカ! そんなんじゃねーよ!!」
「そうそう、そんなんじゃねーぞ!」
男子達がなぜそんなに慌てているのかもよくわからないヒナタは特に気にする風も無く教室を後にした。
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