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校舎から正門までの道を賑やかに歩いていると、正門のところに二つの影が見える。
どうやら一つの影はこちらに向かって手を振っているようで、だんだんと近づくにつれ、おーいと呼ぶ声も聞こえる。
「おーい、ヒナー」
手を振っていた影がヒナタを呼んだ。
それに気づいたヒナタは、笑顔だった表情をぱぁっと更に明るくさせて影の存在を認識した。
「おにいちゃん!」
他の四人もヒナタの視線の先を追うと、そこには長身の男性が2人立っていた。
一人はヒナタに手を振っている男性。
面影はどこかヒナタと似ていて、くっきりとした二重の瞳と長い睫毛、形の良い口もとは喜びを隠すことなく表現している。
また、明るめの髪は耳にかけられていて彼の性格を表しているかのような清涼感があった。
一方隣にいる男性は対照的で。
邪魔にならない程度に整えられた黒髪はサラリと風になびき、眼鏡の奥にあるアーモンド型の瞳はどこか刺すような視線にも見えるものの、その表情からは感情が読み取れない。
ヒナタに対しても軽く右手を上げただけである。
しかしながら、整った顔立ちや立ち居姿からはどこか気品すら漂っているようだった。
大通りに面した正門前に立つ二人は、道行く女性からチラチラと好意的な視線を送られている。
女子高生らしき二人組にいたっては頬を赤らめながら隠すことなくカッコいいを連呼していた。
ただそこに立っているだけなのに、明らかに目立っているのだ。
「おにいちゃん! どうしたの? ふたりでがっこうまでくるなんて」
嬉しくて思わず駆け寄ったヒナタだったが、兄が2人揃って自分を迎えにきたことを純粋に疑問に感じていた。
「いや、キョウスケお兄ちゃんと会ったのは偶然なんだ。な? 兄貴」
手を振っていた男性はヒナタの背丈に合わせるように屈み苦笑いをした。
「ああ。なんとなくアオイも来てる気がしたけどな」
二人が揃っていた理由は判ったが、何故来たのかが判らない。
そんな表情のヒナタに気づいたアオイは再び口を開く。
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