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「ヒナ、今日は父親参観行ってやれなくてごめんな。本当は学校休んででも行きたかったけど……」
「……寂しかったか?」
ヒナタの頭にポンと手を乗せ、キョウスケも心なしか悲しそうな表情をしている。
「ううん! おにいちゃんたちがいそがしいのしってるもん。……ほんとは、ちょっとだけサビシかったけど……もうげんきでたよ!」
少し大人びた顔をしたり、寂しそうに俯いたり、かと思ったら花が咲いたような笑顔をみせたり。
コロコロと変わる表情に、キョウスケとアオイは妹を心から愛おしく感じていた。
今日の夕飯はヒナタの好きなオムライスにしよう、などと話しながら温かな空気が3人を包む──。
「…………で? ヒナタ、あの男どもは誰だ?」
感動の雰囲気が一変。
長男キョウスケの眼鏡がキラリと光り、先ほどまで一緒に帰っていた″あの男ども″もとい、ヒナタのクラスメイト達に視線を移している。
ヒナタは〝おとこども〟という言葉に一瞬反応できずにいたが、キョウスケの視線から察し「おともだちだよ」と無邪気に笑った。
「ほう。……アオイ、どうだ?」
「ん~~~、アウト。ガキんちょなのに立派な下心と、ヒナタに悪影響を及ぼす未来が見える気がする」
いきなりクラスメイトの方を凝視して難しい顔をしだした兄に、本日二回目のハテナを浮かべるヒナタ。
「みえるって、なにがみえるの?」
「ヒナのことが大好きだから、どんなお友達なのかなーって見てるとなんとなーく見えてくる気がするんだ」
「そっか。みんなやさしくてイイおともだちだよ」
「そうだね。イロイロ判ったよ」
そう言って黒い笑顔を見せる次男アオイと、幼い男児二人に殺気ともいえる鋭い視線を向ける長男キョウスケ。
その日は夕暮れの中を7人で帰ったが、その後、男子の間では密かにヒナタの兄についての噂が広がり小学校を卒業するまでヒナタが男の子と一緒に帰ることは無くなったのであった。
─プロローグ/END─
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