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「マサキ様、お呼びでしょうか」
「来たきた!あれ世良(せら)だけ?東雲(しののめ)は?」
「あちらに」
入り口のドアの前にひっそりと立っていた東雲が無言でお辞儀をする。
「今日は、3人でゲームをしようと思って呼んだんだ」
そう言ってマサキ様はテーブルを指差す。
そこには、紅茶と手錠と手錠の鍵らしきものがそれぞれ3つずつ置いてあった。
嫌な予感しかしない。
「ゲームでございますか」
「そう」
「またよからぬことをお考えになったのですか」
「よからぬことってなんだよ」
「お庭に本格的な落とし穴を作ってみたり、従業員80人全員で鬼ごっこ、など数知れずでございます」
あの時は本当に大変だった。旦那様がうっかり落とし穴に落ちてしまい激怒されたし、陽がくれるまで鬼ごっこをして夕食に間に合わず奥様に激怒された。
こう言ってはなんだかロクなことがない。
ぷくっとほっぺたを膨らましたマサキ様は、聞こえないとでも言いたげにゲームの説明を始めた。
「ゲームは簡単。それぞれが紅茶を飲んで後ろ手に手錠をかける。手錠の鍵はひとつだけ本物だから、本物を選んだ人が勝ちね」
勝った人はあとの2人に命令ができるんだよ、と続けた。
意外だ。単純すぎる。思わず聞いてしまった。
「それだけですか?」
「そう、それだけ。ただし紅茶にはひとつだけ媚薬が入ってるから」
やっぱり……。
マサキ様の突拍子もない発言にわたしは開いた口がふさがらず、東雲にいたっては聞いているのかいないのか相変わらず無表情だった。
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