第1章

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 とあが受け取ったその男の名刺には「院長 江有久音」と書いてあった。江有院長は縁が金で彩られた高価そうなカップで紅茶を二人に勧めながら言った。 「まったく、今の若い連中は何を考えているのやら。前々からあの娘には嫌がらせを受けていたのですよ」  とあは紅茶に口をつけ、横目で源之助を見て少し驚いた顔をした。源之助が珍しく、妙に真剣な顔つきだったからだ。とあは思い切って訊いてみた。 「あの女の子は、苦しがっている人の声が聞こえると言っていたようですが?」  江有院長は不機嫌そうな表情をむき出しにして反論した。
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