第1章

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 晩春の深夜、桜海とあは慣れない車の運転に冷や汗をかきながら、東京郊外の道路でオンボロ電気自動車を走らせていた。  やっと待ち合わせの繁華街の入り口に着くと、深夜だというのにまだ煌々と灯りがきらめいている通りから、赤い顔の源之助がやってきた。  車のドアを開け助手席に乗り込んだ源之助を見るなり、とあは口をとがらせて文句を言った。 「もう! 源之助さん! あたしはタクシーじゃないんだからね。終電なくなるまで飲み歩いて帰れないからって、あたしを呼び出さなくてもいいじゃない!」  源之助は意に介する風もなくニコニコ顔で答えた。
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