第1章

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 懐中電灯で辺りを照らすと、そこはフロア全体が一つの巨大な部屋になっている事が分かった。内部に人が浮かんだ大きな水槽が50近くずらりと並び、その上部は筒型の同じ素材のパイプでつながっていた。  水槽をひとつひとつのぞくと、中に浮いている人間は全て、70歳は越えているだろう老人ばかりだと分かった。意識はないようだった。  だが、時折ぴくりぴくりと手足の先が痙攣するように動いている事から見て、生きているのは確かだった。  さらによく見ると、半分ぐらいの人体にはチューブが差し込まれて、様々な色の薬らしき液体が注入されていた。ビデオに様子を撮影し終わった源之助は脱出する用意をしながら思わずつぶやいた。 「何だ、こりゃ? 想像してたより、ずっとひでえ」
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