第1章

6/56

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
「おい、君! そこで何をしてる!」  源之助の怒鳴り声に人影は驚いて立ち上がり、その動きの勢いで皮肉にもマッチが点火した。壁に注がれたガソリンに引火し、小さな火の手が上がる。  炎に照らしだされたのは、肩にわずかにかかる長さの髪の、小柄な少女だった。火災警報装置のけたたましい音が建物の内部から響き渡った。  建物の裏口から職員らしい男性が二人飛び出してきた。源之助はその二人と力を合わせて、足で炎を踏み消した。  その場から走り出そうとした少女の前には、とあが両手を広げて立ちふさがった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加