たどり着いたのは見知らぬ土地

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僕たちは途中から走った。 いや、正確に言えば美奈子に涙目で追いかけられながら僕が逃げ、コウヤが隣を並走しながらイケメンスマイルを輝かせていた。 理由は単純、僕がちゃかしすぎた。 そうして自然と駅に向かって走る訳で、流石に人目が多くなり美奈子も冷静に戻る。 「ふぅー、到着っと。俺たち遅刻だね、ハハハハ」 「でも何でコウヤ君がウチらの家の前に居たの?」 そう、それである。 謎なのだ。 いつもは僕達が遅いと先に行くように言ってあるのに、今日に限っては何故か待っていたのである。 「あぁ、本当に偶然だよ。俺も起きたら寝坊したことに気づいて、どうせなら三人で、と思ってね」 「コウヤにしては珍しいな」 「まぁね、俺も予想外だったよ。まさか時計が変な時間を指して朝を迎えるとは」 「え、それは時計が壊れてたってことなの?」 「いや、たんに電池が切れててそれでだよ」 「それまた本当に不幸だったな」 そう、本当に不幸な出来事である。 コウヤの時計が正常なら、コウヤだけはは逃れられたのかもしれない。 否、もしかしたらコウヤは確実に飲み込まれてしまう運命だったのかもしれない。 少々説得力に掛けるがコウヤはイケメンであり、主人公なのだから、と言ってしまえば僕は納得してしまう。 そうなるとコウヤに巻き込まれたのは僕らということになる。 まぁ、この辺は別に気にしてない。 何故なら三人で一緒にソレに巻き込まれてしまったこと事態には満足してる位なのだから。 三人一緒だった事が唯一良かったと思える事である。
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